コインランドリーの歴史
コインランドリーはいつどこで始まったのでしょうか?
コインランドリーの業界にいる者としてコインランドリーのビジネスがどのようにして始まったのかを知っておくべきと思い、調べてみました。
先人の知恵と慧眼に感謝します。
電動洗濯機の登場
現在のような洗濯機が登場するまでのお洗濯は桶と洗濯板でゴシゴシ手洗い、とても重労働でした。
1874年、アメリカ。技術者のBlackstone氏、奥様への誕生日プレゼントとして洗濯桶に手回し式のハンドルとアジテーターを取り付けた洗濯機を制作してプレゼントしたのが最初の手動式洗濯機と言われています。奥様への思いで制作した洗濯機が世界中の生活スタイルを大きく変える事になるとは考えてもみなかったでしょうね。
1882年、エジソンがニューヨークに火力発電所を作り、電気を送るようになり、人々の暮らしが劇的に変化していくようになりました。
洗濯機もその一つです。
1901年、技術者のフィッシャー氏が電気式洗濯機の特許を出願。これが最初といわれています。
電気式の洗濯機の量産が開始されたのは1907~1908年。全米で数多くの洗濯機メーカーが誕生したそうです。
当社が取り扱っているSpeed Queenブランドの製造元、アライアンス社の前身であるBarlow & Seelig社は1908年創業ですので、まさしくこの流れに乗ったのでしょうね。ちなみに、Speed Queenという名前の由来は、クイーン、つまり「家庭のクイーン=主婦」の家事を「スピーディー」にする。との想いがあったそうです(当時、お洗濯は女性の仕事とされていました)。
セルフサービスランドリーの登場
時は流れて。
1930年代。アメリカ。テキサス州のフォートワースという町。
大恐慌の嵐の真っ只中、家に電気が通っていないご家庭が少なくなかった時代。電気が通っていても、電気式洗濯機は高嶺の花。
そんなご家庭の家事の大変さに目を付けた起業家がいました。
彼の名はTannahill氏(Cantrell氏という説もあります)。
電気式洗濯機4台を購入し、ビルのフロアに洗濯機を並べて、洗濯機を1時間あたりで貸しだす商売を始めました。
付けた名前は Wash-a-teria。
当時多くの人たちが日常的に通っていた安くて便利なcafeteriaにお洗濯のwashを合わせて命名したそうです。
1934年4月18日、世界で最初のセルフサービスランドリーの誕生です。
このアイデアは画期的でした。この商売に共感した起業家たちが開業したWashateriaの数はテキサス州だけで数百店舗に上るそうです。
当時は洗濯機のみ、乾燥機はありませんでした。
お洗濯が終わった利用者は濡れた洗濯物を自宅に持ち帰って干していたようです。
厳密には「コイン」ランドリーではなく、時間ごとの貸し出し。そして、営業時間中は店員が滞在していました。
ちなみに、セルフサービスのビジネスは大恐慌時代がきっかけだそうです。人件費を抑制し効率を上げる事で厳しい時代を乗り越えようとしたことがきっかけ、今では世界中に様々なセルフサービスのビジネスが展開されていますね。
セルフサービスランドリーの発展
40年代後半になると好景気に支えられ人々は街中に移り住むようになってきます。各部屋に洗濯室を設けることが困難だった為、ビルの1階部分にコインランドリーを設けるのが一般的になりコインランドリー店舗数が急増していきます。
現在でも洗濯機を設置するスペースがないアパートは多く、近所のコインランドリーに通う世帯が全米の3分の1ほどと言われているそうです。アメリカのコインランドリー店舗が日本の何倍もの大きさで運営されているのはそういう住宅環境があるからなのですね。
この時代の洗濯機は「洗い」機能のみ、脱水機能はありません。洗濯が終わると、外付けのローラーに洗濯物を挟みハンドルを回すとローラーが回転して洗濯物の水分を絞る。という仕組みでした。
50年代になると洗いとすすぎと脱水まで1台で完結できる「全自動」洗濯機が登場し、洗濯の手間は大きく改善します。
そして、乾燥機もこの頃にランドリー店内に登場し始めます。
ランドリー(Laundry)を自動化(Automat)する、という意味のLaundromatという言葉が登場し、Laundromatが地域の交流の場に発展し一般的に受け入れられるようになりました。
24時間営業コインランドリーの誕生
1947年、商売が大きく変化します。機械に課金できる機能「コインメカ」が洗濯機に搭載され始めるようになりました。
いままではお客様がスタッフにお金を払い、スタッフが機械を稼働させて時間を計測する仕組みでしたので営業時間が限られていました。コインメカが搭載されることで、スタッフの常駐は不要となり24時間営業が初めて可能となりました。深夜族に大変好評だったそうです。
コインメカの登場でWashateria / Laundromatは全米に瞬く間に広がっていきました。
50年代~60年代にはコインランドリーは生活の一部として欠かせないものになります。
店舗経営者はお客様への利便性を追求し清潔でキレイな店舗、居心地の良い店舗運営に注力していきます。
店内にコーヒーやお菓子などの自動販売機を設置するお店や、ジュークボックスを設置するお店などそれぞれ独自性を打ち出していきました。
業界を取り巻く環境も進化しました。店内清掃や機械修理の専門業者が誕生します。またセルフサービスだけでなく洗濯代行(Wash-Dry-Foldと呼ばれています)のサービスを展開する店舗も数多く登場しました。
現在は26,000~29,000店舗程度、US$6billion(約9000億円)市場といわれており様々な業態のコインランドリービジネスが米国内に展開しています。
日本のコインランドリーの始まり
さて、日本ではいつ頃始まったのでしょうか?
1953年、東京都内で1回10円で洗濯機を利用できるお店が開業したのが最初と言われています。アメリカの約20年後、まだ日本もお洗濯は重労働の時代、とても画期的で利用者に重宝されたそうです。
1960年代には銭湯に併設される形でコインランドリーのビジネスが始まっていきます。
当時は洗濯機を持たない若者や独身者向けで、銭湯に来たついでにお洗濯も済ませてしまう便利さが受けたようです。
また、銭湯にとっても、水道やボイラーの設備を有効活用できるため相乗効果がありました。
コイン式の洗濯機を並べたコインランドリー店舗の登場は1963年、東京北区と言われています。オリンピックの前年ですね。
📌まとめ
昭和100年の2025年。アメリカでWashateriaが開業して91年、日本でコインランドリーが開業して72年。
今回、コインランドリーの歴史を調べていきながら、当時の起業家・利用者様の思いに触れることが少しできたように思います。
これからも皆様のお洗濯のお役に立つビジネスであり続けてまいります。
このコラムを書いた人
池部慎二
株式会社ダイワコーポレーション
執行役員
- 業務用ランドリー業界最大手のAlliance Laundry Systems社(米国)にて日本・韓国市場を統括
- 2015年:ダイワコーポレーションの経営企画部長に就任。コインランドリー事業説明会講師・拠点拡大・中長期計画策定・社員教育に注力
- 2018年:施設向け事業の全国展開を推進、複数の大手企業との業務提携を実現
- 2023年:執行役員として全社の事業推進及びマーケティングを統括
- TV等メディア出演実績あり